他人事みたいに生きる
「カラフル」森絵都
でも、自分のこととなると、やっぱりそうもいかないよ。いろいろ慎重になるし、不安にもなる。ケチにもなるしさ
下界でまた気持ちが縮こまりそうになったら、再挑戦の四ヶ月を思いだしてください。自分で自分を縛らず、自由に動いていたあの感覚を。
自分が勝手につくって、周りが勝手にラベリングした監獄の中で、私たちは生きている。人生をやり直せたら、あいつみたいに自由に生きられたらって、いつだって他人の入っている監獄をうらやましく思いながら。
「自分は、あいつは、暗い、うるさい、紳士だ、頭が悪い、優しい、可愛い」
言葉の数だけ、監獄は存在する。
もしも、自分の監獄を抜け出して、明日の朝から、自分の人生を生き直せたら、どうなるだろう。他人事みたいに自分を生きられたら。
監獄を抜けた感覚を疑似体験できる小説。中高生向けだけど、大人には大人の読み方がある小説。明日は今日の連続じゃない。明日は明日の自分がある、とちょっぴり希望が持てる小説でした。
カラフル(森絵都)
生前の罪で輪廻のサイクルから外された魂が天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得る。自殺を図った少年の体にホームステイし、修行する中で、自分やホームステイ先の家族の意外な一面が明らかになっていく。
ドラッカーと陸軍
高杉良「燃ゆるとき」
旅順の予備士官学校時代は、その後の人生にとっても貴重な勉強をした。(中略)「部下を信頼せよ、と同時に部下に信頼される行動をとれ」ということ。また「命令は必ず遵守せしめよ。しかし自ら不可能なことを命令するなかれ」
ブラック企業的なイメージがあった陸軍のマネジメントに、こんな教えがあって驚いた。日本と正反対のイメージがある欧米のマネジメント手法に通じるものがあったからだ。欧米人のリーダーからは、こう言われている。
「マネジメントは、自分でなく、部下の手を動かし、部下に成果をあげるアート」
「部下を信じて、彼らの強みをオーケストラするのがリーダー」
「つまり、部下の得意なことを組み合わせて成果を紡ぐ編集者であること」
部下に成果をあげさせる(部下を信頼せよ)、得意なことに特化させる(不可能なことを命令するなかれ)。
あのドラッカーさんも「マネジメントは、生産的な仕事を通じて、働く人に成果をあげさせなければならない」と言っている。
得意なことで、何かに貢献できる社会。やりたくないことから逃げても、得意なことで、自分の居場所をつくれる社会。
トイストーリー3で、おもちゃ達が個性を活かして、サニーサイド幼稚園を脱出したシーンみたいに。
誰だって、自分にしかできないことで、人の役に立つのは嬉しい。
陸軍、ドラッカー、東洋水産のマネジメントへつながる「人を信じて活かす思想」が、日本のリーダー層にもっと広がれば、生きやすくなるのに、と思った。陸軍の時代からある考えなのに、なんで消えかかっているんだろうか。。
燃ゆるとき
生存率4%のノモンハンの激戦を生き抜いた元陸軍士官であり、東洋水産創業者の森和夫を中心に、マルちゃん、赤いきつね等で有名な東洋水産の草創期から、日清食品との攻防、グローバル企業になるまでを描いた経済小説。
「考える」を考える
サッカーなら、攻撃の際に「サイドを変える」という言葉がある。右サイドから左サイドというように、ボールを扱うフィールドを変えるのだ。
ちょうどそんなイメージが、「考える」ことだと言ったら、驚かれるだろうか。ボールの場所が変わることによって、フィールド全体に動きが生まれる。そう、考えるとは、思考の枠組みの構造に動きを与えることなのだ。
ボールがフィールドを動き、陣営が崩れ、新たなフレームが生まれ、ゲームが動く。(中略)そして、新たな突破口が見えてくるのだ。
NHKプロデューサー丸山俊一さんの、「結論は出さなくていい」からの引用。
左か右か、賛成か反対か、一線を越えたかどうか、どっちかにしろ、と迫ってくる世の中で、「結論は出さなくていい」という言葉に、優しさを感じて思わず手に取った。
自分も、外資の会社で、毎日、結論は何?と言われてるし。。
考える=思い悩んで、Aがいいか、Bがいいか、結論を出すこと
結論を出す=はっきりしていて、透明性があって、良いこと
たぶん、たくさんの人の頭の中にある等式。
だけど、考えることは、AかBか悩んで決めることというより、サイドチェンジをすることだし、結論をはっきりさせない(思考を止めない)ことで、第3の道が見つかることって多いと思う。
結論を出さない思想という結論に向けて、NHKプロデューサーとしての番組の企画方法、勝海舟の思想、デリダの脱構築を結びつける。筆者自身のサイドチェンジを追体験しながら、自分の頭の中でも、サイドチェンジが起きた。
結論は出てないけど、前には進んでる。
そんな思考の足跡を残してみたくて、ブログを始めた。
これから、自分の倫理観・人生観・思考にサイドチェンジを起こした本について、綴っていきたい。