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伊坂幸太郎から読む、出会いの哲学

 

アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)

アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)

 

アイネクライネ(伊坂幸太郎)からの一行。 

 俺、出会いがないって理由が一番嫌いなんだよ。何だよ、出会いって。知らねーよ、そんなの

 

恋愛において、人は始まりを重視する。

 

どんな出会い方をしたか、どんな告白だったか、プロポーズの言葉は何か。

 

ドラマを見ていても、人の恋愛話も、その2人が結ばれるまでが面白いわけで、その後のノロケは別に見たいものでもない。

 

でも、ずっと疑問に思っていた。

 

「そんな序盤にピークがきていいのか、あとは人生下り坂か」と。

 

アイネクライネを読んで、このもやもやがすっきりした。やっぱり出会ってからが肝心だ。

 

冒頭の一節から登場人物は、こう続ける。

劇的な出会いにばっかり目が行っていると、もっと大事なことがうやむやになるんだよ。

そうそう、これが僕のもやもや。

出会い方とかそういうのはどうでもいいんだよ(中略)後になって、『あの時、あそこにいたのが彼女で本当に良かった』って幸運に感謝できるようなのが、一番幸せなんだよ

というと?

 もっと簡単に言えばよ、自分がどの子を好きになるかなんて、分かんねえだろ。だから、『自分が好きになったのが、この女の子で良かった。俺、ナイス判断だったな』って後で思えるような出会いが最高だ、ってことだ

 

答えをストレートに言ったわけじゃないけど、僕にはすごく刺さった。

 

お見合い、出会い系、合コン、共通の知人、同じクラス、ナンパ。あるいは落としたハンカチを拾ってくれた、あの人。

 

どんな形で出会いがあるか、分からない。

 

だけど、付き合って過ごした時間とか、結婚生活とか、出会ってから後の方が、自分の物語にとっては、もっと大事で。

 

出会い方に引け目を感じる人はいるかもしれないけど、たとえ、ナンパでも、できちゃった結婚でも、「あぁ、あの時出会えて良かった」と今思えていたら、出会い方は何だっていい。

 

もっというと、「過去の積み上げが現在を規定する」のではなくて、「現在の状態が過去を意味づけする」ということ。

 

人生万事、塞翁が馬。

 

伊坂さんの恋愛小説はキュンとしながら読める青春的要素はないけど、じわりとあったかくなれて、オススメです。